自分たちの手でつくるムサビのよりよい学生生活

ムサビ生の充実した学生生活のために、学生と大学の架け橋として活動する武蔵野美術大学学生協議会。学生からの要望を大学側に伝えて交渉するほか、サークル活動や学生展示の支援、芸術祭の支援などが主な役割です。すべてのムサビ生に関わりのある存在でありながら、あまり表に出ることのない学生協議会の活動について、会長の德冨もよさんと副会長の安井悠起さんに伺いました。

2023年度 武蔵野美術大学学生協議会
会長 德冨もよさん(彫刻学科3年)
副会長 安井悠起さん(クリエイティブイノベーション学科3年)


——おふたりが学生協議会の活動に参加したきっかけや動機を教えてください。

德冨もよさん(以下、德冨):私たちは昨年度の芸祭執行部(※ムサビの芸術祭を取り仕切る実行委員会の執行部)の委員長と副委員長だったんです。芸祭執行部は学生協議会からの支援で運営しているので、その頃から縁がありました。そのときの学生協議会は前会長がひとりで活動していて、そのあとを継ぐ後輩がいなかったので、誰もいないならやろうと思ったのがきっかけです。

また、私たち学生は学生協議会の会費として4年間で4000円を払っているのですが、それを芸術祭の参加費だと誤認している学生が多いということがわかりました。私たちが1年生のときの芸術祭はオンライン開催で、その前の年は開催自体がありませんでした。そこで学生から「なぜ会費を満額払わないといけないのか」「会費が払えないから芸術祭の参加をやめる」などの声があがっていたんです。私も会費がなにに使われているのか知らなかったので、そういう不明瞭なところを明確にし、サークル活動や学外展示などを支援することで、コロナからのムサビ生たちの復興を担えたらと思い参加することにしました。

安井悠起さん(以下、安井):僕も芸祭執行部のときに学生協議会と関わったのが最初のきっかけです。以前からあった学生が利用できる制度やムサビのサークルカルチャーなどには、コロナの期間をはさんだために先輩から後輩に引き継がれなかったものもたくさんあります。いまは部室の場所や備品の使い方でさえわからなくなっているサークルもあり、この機会に変えたほうがいいところは変えて、残すべきものは残すというふうに、もう一度つくりあげられたらいいなと思っています。

——芸祭執行部の活動もとても大変だったと思いますが、さらに大学のことに主体的に関わってみたいという思いがあったのでしょうか?

德冨:私は2年浪人しているのですが、浪人中の“何者でもない感”がすごく怖かったんです。外から大学を見ている時間が長かったので、大学はとても恵まれている環境だと感じています。大学に入ってからは芸祭執行部に参加したり、展示も年に4回くらいやったりしていますが、アーティストとしても、自分たちの環境をつくり仕組みを動かす立場としても、大学生のうちにしかできない経験をしっかり積んでおきたいという気持ちがあるんです。芸術祭では学生協議会の会費を使うので、学生から厳しい言葉をもらったりしましたが、その経験を活かして後輩をきちんと育てて卒業するのが私の役目だとも思っています。

安井:僕たちはちょうどコロナ禍での入学でした。大学のこともよくわからないまま2年生になって、芸祭執行部の活動で学生生活チームや施設管財チームの職員の方にいろいろ教えてもらい、ようやくムサビのリソースがわかるようになりました。せっかく美大にいるのだから、もう少し学生が大学のものを活用できたり、つながりを持って活動できるようになると、学生にも大学にもメリットがあるんじゃないかなと思いました。

——本当は大学のものや制度を利用できるのに、知らないまま卒業してしまうのはもったいないですね。そこを橋渡しするのが学生協議会の重要な活動かと思いますが、具体的にどんな活動をしているのでしょうか?

安井:今年はまず「大新歓」を開催しました。大新歓は2011年の東日本大震災の年に始まった、4月に行う新入生歓迎会です。サークルがパフォーマンスをしたり展示をしたりして、新入生と交流します。コロナで開催がなくなっていたので久しぶりの開催となり、過去の動画を見ながら準備を進めました。例年は1日のみの開催ですが、今年はより多くの新入生が参加できるように3日間かけて行いました。これには芸祭執行部の経験が活きていたと思います。

德冨:学生協議会にも3人の新メンバーが入ってきたので、いまは大学の仕組みを伝えつつ、芸術祭に向けて学生から協議会費の徴収をしています。会費については、芸術祭の参加費だけではなく、学外展示の支援やサークル活動の補助金としても使っているということを、もっと広報していきたいと思っています。「4000円も取られた」というふうに捉えてしまう学生もいるので、しっかりと内訳を公開するなどして、その4000円がちゃんと自分の学生生活に活きているということを実感してもらえるようにしていきたいです。

——ほかに、学生協議会としてやってみたいことはありますか?

德冨:大新歓以外にもイベントを開催したりして、学生の支援をしているということを大々的に広報していきたいです。

安井:僕も新しいことができたらいいなと思います。たとえばムサビには音楽系のサークルがいくつかあるのですが、普段はサークル同士の関わりがまったくないということを知り、もったいないなと。大新歓のステージはとても盛り上がったので、芸術祭とは別の音楽祭などもできたらおもしろいなと思っています。

——学生協議会で得た経験を、この先どのようにご自身の活動に活かしていきたいですか?

德冨:芸祭執行部でも学生協議会でもたくさんの人と話す機会があり、初対面の人と話すことにも慣れたと感じています。また、私は高校までにも学級委員長などをやっていましたが、高校と大学では自由度がまったく違います。もちろん学生生活チームと話し合いをして進めますが、学生が主体となって組織のあり方や学生生活に関する仕組みを変えていけるということを体感しました。その経験をしたので、今後社会に出てからも、既存の仕組みに飲み込まれることなく、変だなと思ったことに声を上げたり、新たな提案ができたりするのではと思っています。

安井:僕はものごとや仕組みに対して、どういう人たちが関わっていてなにが課題なのかという、問題解決に至る本質を見極めるような力がつけられたかなと思っています。それまでは先入観を持ってしまうこともありましたが、ちゃんと知ることでいろいろな人と関わって問題を解決していけるようになり、成長した部分があるのではと。僕はいまのところ具体的に目指す業界があるわけではありませんが、今後進んだ道でそういう力を発揮して自分の持ち味を活かしていきたいです。

——後輩に向けてひと言お願いします。

安井:自分たちは大学に対して異論を唱えたり、問題を解決しようという気持ちがわりと大きかったと思います。多くの人が高校までの経験からか、学校の制度やルールはハナから変えられないものだと思っていますが、大学ではその殻を破って自分の意見を貫き通してほしいです。特に美大は常になにかを生み出していくところなので、その実行力を発揮して、変えたいことがあればそれをちゃんと変えていくことが一番大事だと思っています。

德冨:たしかに、SNSで文句を言う人はいても、実際に大学に掛け合う人はあまりいません。学生生活には、職員から見てもわからない面があると思います。私はその視点を学生協議会として大学側に伝えています。学生協議会に入ると職員と話す機会が自ずと多くなるので、コミュニケーションがとれる関係を築いて話をすることができるようになります。そうすると、意外と大学が学生の声を聞いて考えてくれるということも見えてきます。ムサビのことを好きな人が学生協議会に入ってくれて、もっとこうしたらいい大学になるということを一緒に考えられたらうれしいです。受験生が見ても「ムサビは学生が生き生きしていていいな」と思ってもらえるような大学にしたいし、そういう後輩にたくさん学生協議会に参加してもらいたいです。


【武蔵野美術大学学生協議会】
学生が主体となり、学生生活をよりよいものにしようと働きかける学生有志団体。
大学と学生の架け橋として、学生からの要望を取りまとめ大学と交渉したり、オープンキャンパスにおける受験生対象の相談会を開くほか、学生企画の支援、サークル・部室の管理、そして新入生と大学内の有志サークル・団体の最初の接点となる「大新歓」の企画・運営をしています。

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